上野原通信 No.257
カタクリ(ユリ科 Erythronium japonicum Decne.)は、スプリング・エフェメラルの一種です。古語は堅香子(かたかご)。
物部の八十少女らが汲みまがふ寺井の上の堅香子の花
大伴家持
万葉集でカタクリが出てくるのは、この一首だけでそうです。
早春に葉を出して、4~5週で地上部は喪失します。発芽した最初のころは、1枚の葉を出し、栄養を鱗茎に貯めていきます。十分栄養が蓄積すると葉を2枚出して、花芽を分化します。光合成期間が短いため、発芽してから開花するまでに、8~9年かかると言われています。
片栗粉は、鱗茎からでんぷんを採取しますが、薬用としても利用されていました。カタクリでは採取量が少ないため、現在の片栗粉は、ジャガイモでんぷんなどを使うので、薬理作用はありません。
生物が周期性を手に入れた過程はどのようなものだったのでしょうか。不思議に思えてなりません。その周期性をどうのように記憶しているのでしょうか。まだまだ、知らない世界が広がっています。
2022.3.26 川田 好博