上野原通信 No.289

ベニバナボロギク(キク科 Crassocephalum crepidioides)は、アフリカ原産で、帰化植物のひとつ。第二次世界大戦後、北九州で発見され、今では全国に広がっています。

 柔らかな草で、筒状の先端が赤くなる花をつけます。舌状花はありません。裸地に生え、やや湿ったところを好みます。乾燥した道路沿いなどには少ないのですが、湿った畑や溝のわきなどではよく見かけます。山間部において、森林伐採や山火事の跡地によく出現し、数年で場所を移すことが知られています。森林であった場所に空き地が生じると、その翌年からこの種が一面に出ることがあり、数年ほどそれが続いた後に消えてしまいます。遷移の初期に素早く成長し、他の植物が繁茂し始めると消失、新たな場所を求める、という先駆植物です。

 日本にはシダ植物以上の維管束植物は約4000種あると言われていますが、そのうち約1200種は帰化植物です。植物にとって、国境は意味がありません。しかし、日本は海に囲まれていて、生物相は比較的安定した状態が保たれています。その中で、新しい種が混入すると、生態系の撹乱が起こります。帰化植物を全て駆除するのは現実的にできません。生態系の保全には、地域的な区分を考慮することが必要になってきています。

 

2024.11.16 川田 好博