上野原通信 No.287
オオシラビソ(マツ科 Abies mariesii)は、中部地方から東北地方の亜高山帯に生育する日本固有種です。ハイマツを除く針葉樹の中で、最も多雪環境に適した樹種と言われています。中部地方では、雪の多い日本海側ではオオシラビソが、太平洋側ではシラビソが優勢となっています。東北地方では南部を除いて、シラビソが分布しないため、オオシラビソが圧倒的に優勢となっています。しかし、飯豊山地・朝日山地・出羽三山・鳥海山などでは、あまりにも豪雪のため、オオシラビソの分布を欠きます。ところが東北地方の山岳地帯でオオシラビソの化石はまったく発見されていません。最終氷期以降に分布を広げています。ミステリアスなことです。
大型の暗紫色の球果が特徴的です。
日本には四季があり、それが普通であると思いがちですが、地形的にも地理的にも奇跡的な事柄です。偏西風の蛇行によって、冬には北の冷たい空気が日本にもたらされ、厳しい冬になります。偏西風の蛇行の深さは、ヒマラヤ山脈が関係しており、そのことが、日本の冬の厳しさをもたらしています。大陸の東岸にあり、高いヒマラヤ山脈の存在が、自然豊かな日本を作り上げてきました。
2024.9.17 川田 好博