上野原通信 No.285
キヌガサソウ(シュロソウ科 Paris japonica)は、日本の固有種です。以前はユリ科に分類されていましたが、キヌガサソウ属(Paris)は、1属1種で、近縁種はありません。本州(中部地方以北の日本海側)に分布します。青森県が北限、白山が西限、南アルプスが南限です。山地帯、亜高山帯、高山帯下部にかけての深山の湿った草地、明るい林床、広葉樹林内に自生しています。
和名は、放射状に並ぶ葉の様子を奈良時代の高貴な人にさしかけた衣笠に見立てたことに由来します。別名ハナガサソウ。栂池自然園で撮影しました。花弁のように見えるのは萼片です。花弁は糸状で目立ちません。
栂池自然園は、長野県最北の小谷村にあります。標高1900m、白馬乗鞍岳の中腹にある高層湿原です。ゴンドラとロープウエイを乗り継いでいけます。左膝の変形関節症を抱える身にとって、貴重なところです。
豊富な植生を持っている日本は貴重な地域です。四季がはっきりしているのは、普通だと思われがちですが、8000m級のヒマラヤ山脈の存在や大陸の東縁にあるという特殊な位置がそうさせています。自然を深く愛するためには、自然の摂理に心を寄せることが大切だと思っています。
2024.7.13 川田 好博