上野原通信 No.283
チドリノキ(ムクロジ科 Acer carpinifolium)は、カエデの仲間です。日本固有種。岩手県より南の本州、四国、九州に自生しています。温帯の山地の沢沿いに生育します。花期は4-5月。すでに結実しています。成熟するのは7-8月です。秋に黄葉します。実の形は翼果で、カエデの仲間と実感できます。翼果が重なっている様子が千鳥に見えたので名付けられました。別名ヤマシバカエデ。雌雄異株。
カエデ属の翼果は、風に乗って回りながら飛びますが、必ず2つに分かれて種子の部分を中心にくるくる回ります。
カエデ属は、ちょっと昔の植物図鑑では、カエデ科に分類されています。日本の植物図鑑の多くは、新エングラー体系という分類体系を基にしていますが、1990年代以降に発展してきたDNA解析に基づく分子系統学によって、1998年にAPG分類体系が発表されました。形態的な特徴による分類に加えて、遺伝子変異による進化の系統を反映させるものになってきました。APGによって、カエデ属はムクロジ科に変更されました。APGも、研究の成果により、いくつもの変更が繰り返されています。まだ、発展途上の学問分野です。自然認識は、日々深化しています。
2024.5.3 川田 好博