上野原通信 No.281

 フサザクラ(フサザクラ科 Euptelea polyandra Sieb. et Zucc.)は、花被はなく、多数の雌蘂と雄蕊からなり、3-4月頃、葉が出る前に開花し、紅色の雄蕊のやくが房状に垂れ下がって美しい。花弁も萼もありません。シーボルトとチェカリーニによって学名が付けられています。生物の学名は、属名と種小名とを組み合わせたニ名法によって表記されます。18世紀半ばに、スウェーデン人のカール・フォン・リンネによって提唱されました。日本人が初めて学名を付けるのは、NHKの朝ドラ「らんまん」にあるように、牧野富太郎のヤマトグサ、1889年(明治22年)を待たなくてはなりません。
 フサザクラ科は、フサザクラ属のみで、日本固有種のフサザクラと中国南部からアッサムに自生するE. pleiospermaの2種しかありません。サクラの名がついてますが、キンポウゲの仲間です。樹皮にサクラと似た皮目があります。山地の谷沿いなどの湿気の多いところに自生し、樹高は15メートルほどになります。
 「美しい自然との共生」という言葉に違和感を感じています。自然を美しい、美しくないという基準で分けるのは適切ではありません。「自然」という言葉のあいまい性も問われています。

 

2024.3.26 川田 好博