上野原通信 No.280
アスナロ(ヒノキ科 Thujopsis dolabrata )を含めヒノキ亜科の葉は、鱗片葉と呼ばれています。写真はアスナロの葉裏です。白い部分は気孔帯と呼ばれ、種によって特徴的な形をしています。アスナロは、広い涙型になっています。この気孔帯の形によってヒノキ科の樹種を区別することができます。ちなみにヒノキの気孔帯は、Y字型、サワラは、蝶型、クロベは、目立った気孔帯はみられません。
湿潤な冷温帯に分布する日本固有種です。材は建築材などに利用され、特に青森県、石川県では重要な樹種になっています。江戸時代、尾張藩が木曽谷のヒノキを保護する目的で伐採を禁止した木曽5木(ヒノキ、サワラ、アスナロ、ネズコ(クロベ)、コウヤマキ)の一つです。耐陰性が強く、ヒノキとアスナロが混生すると、最終的にはアスナロが優占します。
木材の自給率は、2002年に18.8%と最低になりましたが、2022年では40.7%に改善されています。しかし、林業従事者の減少が進み、後継をどうするのか、深刻な状況です。一次産業を一貫して軽視してきた政治の責任が問われています。
2024.2.11 川田 好博