上野原通信 No.273
ヤブカンゾウ(ススキノキ科 Hemerocallis fulva var. kwanso)は、中国原産で、史前帰化植物といわれています。日本に入ってきているのは3倍体で、結実しません。日本のヤブカンゾウは、全てクローンということになります。雄しべ、雌しべが弁化して八重咲きになっています。
ヤブカンゾウを含むワスレグサ属(Hemerocallis)の分類は大きく変化しました。以前の新エングラー体系では、ユリ科に分類されていましたが、DNA分析による系統分類が提起された1998年のAPGⅠでは、キスゲ科が作られました。2003年のAPGⅡでは、ススキノキ科かキスゲ科とされ、2009年のAPGⅢでは、ススキノキ科に落ち着きました。ススキノキ科には、ススキノキ亜科、キスゲ亜科、ツルボラン亜科が含まれています。ススキノキは、オーストラリアに生育し、キスゲとは似ても似つかない姿をしていますが、ユリよりも近縁というのです。
見た目で判断をすると、誤ることがたくさんあります。自然科学の分野でも、社会科学の分野でも、学問そのものが進化しているので、いつでも新しい知見を身についてるために絶えず学ぶことが必要ということでしょうか。
2023.7.21 川田 好博