上野原通信 No.248

アヤメ(Iris sanguinea アヤメ科)。国師ヶ岳、金峰山、瑞牆山など奥秩父の山々の裾を縫うようにクリスタルラインという山道が走っています。その一隅に標高1700mの乙女高原があります。亜高山帯に属し、6月上旬であれば、レンゲツツジが山を覆います。まだ花は残っていますが、今の季節、アヤメが咲いていました。アヤメ属には、カキツバタ、ノハナショウブなどがあり、湿生植物のように思われがちですが、アヤメは乾いた草原に自生します。漢字で菖蒲と書きますが、菖蒲湯に使うショウブは、全く別のショウブ科の植物です。

 

アヤメは、写真のように外花被片に網目模様があります。ノハナショウブを原種として、さまざまな色のハナショウブがつくりだされました。ところが黄色の系統がなかったため、西アジアからヨーロッパ原産のキショウブが輸入され、植栽されたり交配に使われました。このキショウブ、繁殖力が強く、他の植物を駆逐する恐れがあるので、環境省から「要注意外来植物」に指定されています。

 

「自然を守る」ことも、科学的な知識に裏付けされた意識が必要になってきた時代です。フェイクニュースが氾濫し、すぐにだまされる世の中です。

  

2021.6.21 川田 好博