上野原通信 No.245
オオシマザクラ(Cerasus speciosa (Koidz.) H.Ohba)は、日本に固有のサクラの一つです。関東以南の島嶼の海岸沿いから山地に自生しています。伊豆半島、三浦半島、房総半島にも自生していますが、島嶼から持ち込まれたものとの見方もあります。葉や花に芳香があるのも特徴です。そのために桜餅を包む葉は、オオシマザクラの葉の塩漬けが用いられます。
近年早咲きのサクラとして有名になっているカワヅザクラは、オオシマザクラとカンヒザクラとの自然交配種と考えられています。
命名者のKoidz.=小泉源一は、日本植物分類学会の創立者であるし、H.Ohba=大場秀章は、新しい分類体系APGを日本に導入した人の一人です。日本の植物分類学にとって無視することのできない二人が命名にかかわっていることに縁を感じます。
例年ならば多摩森林科学園にあるサクラ保存林を訪れるのを常としていましたが、残念ながら新型コロナウイルス感染症の拡大で休園となっています。人類の脅威に対する対応の仕方を考える時代に直面していると思われます。経済成長という視点ではなく、新しい価値観が求められる時代です。
2021.3.19 川田 好博