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核兵器禁止条約署名・批准を求める請願の採択を(討論)

上野原市議会議員 川田よしひろ

請願第5号 「日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求める意見書」の提出を求める請願 の委員長報告は不採択にすべきものです。委員長報告に反対する立場から討論を行います。

核兵器廃絶は、唯一の戦争被爆国である日本国民の切実な願いです。80年前広島・長崎にアメリカによって投下された原爆は、一瞬にして多数の市民を殺害したばかりでなく、放射線による障害は、現在も被爆者の生命と精神を蝕んでいます。これほど非人道的な兵器はありません。

1899年に結ばれたハーグ陸戦条約の条約付属書では、「不必要な苦痛を与える兵器、投射物、その他の物質を使用すること。」を禁止しています。また、「防守されていない都市、集落、住宅または建物は、いかなる手段によってもこれを攻撃または砲撃することはできない。」とされています。原爆が投下されてから80年もなるのに、未だに苦痛から逃れられないことは、誰が考えても、不必要な苦痛と以外考えることはできません。さらに、防守されていない集落、住宅または建物への攻撃を禁止した条項にも違反しています。しかし、戦勝国となったアメリカの不法行為を咎めることにはなりませんでした。

1954年、南太平洋のビキニ環礁では、アメリカの水爆実験によって第5福竜丸が被爆しました。このビキニ環礁の水爆実験によって、核兵器の廃絶を求める運動が広がりました。その画期となったのが、1955年に広島で開かれた第1回原水爆禁止世界大会でした。翌1956年日本原水爆被害者団体協議会:日本被団協が結成されます。

国連総会でも、核兵器について多種の決議がなされています。1964年、部分的核兵器禁止条約が結ばれます。しかし、この条約は、アメリカや旧ソ連等が、地上の核実験よりも地下核実験による核兵器開発がより有効と判断した結果であり、核兵器廃絶への道を開くことに繋がりませんでした。1970年には、核兵器不拡散条約NTPが結ばれます。この条約は、5大核保有国の核保有は認めるが、それ以外の核保有は認めないという中途半端な条約でした。この条約のなかに、誠実に核軍縮をすすめるという項目がありながら、実際にはアメリカや旧ソ連の核兵器の保有数を増加させました。それどころか、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮と新たな核兵器保有国を生み出し、条約の実効性が疑われています。

1996年、核兵器の廃絶を求める新たな条約の作成を求める活動が始まりました。2011年国連総会でマレーシアなどが提出した核兵器禁止条約の交渉開始を求めた決議が127か国の賛成で採択されました。 2017年7月には、国連本部で開催中の核兵器禁止条約交渉会議にて賛成122票、反対1票(オランダ)、棄権1票(シンガポール)の賛成多数により採択されました。2020年10月、条約の発効に必要な50か国が批准しました。今年3月時点で署名した国・地域は94か国・地域、批准した国・地域は73か国・地域になっています。

日本政府は、核兵器禁止条約に一貫して反対してきました。NPT締約国会議を通じて、核兵器保有国と非保有国との橋渡しをするとしています。しかし、核軍縮を進めるとした項目を持ちながら、前進が50年以上もみられませんでした。

そのために国連の多数の加盟国が作り上げたのが、核兵器禁止条約です。条約は、条約は、核兵器の開発、実験、製造、取得、保有、貯蔵、移譲、使用、使用の威嚇などの活動を、いかなる場合にも禁止しています。核兵器の廃絶のためには、こうした全面的に禁止する他ありません。核兵器保有国をはじめ、ずべての国を核兵器禁止条約に参加させることが、核兵器廃絶の現実的な道です。

ロシアのウクライナ侵略が続いている現在、プーチン大統領は核兵器の使用すらちらつかせています。アメリカも核兵器の先制使用を否定していません。北朝鮮も核兵器と大陸間弾道弾の開発を進めています。こうした現状の中で、核兵器保有国が同時に核兵器の廃棄をめざすことが必要になっています。核兵器保有国を核兵器禁止条約に参加させるためのイニシアティブを取るにあたって、唯一の戦争被爆国である日本の位置は非常に重要です。そのためには、率先して条約に署名し、批准することが求められています。核兵器禁止条約に参加するためには、その国が核兵器を保有していないことを求められます。日本は、アメリカの核の傘のもとにあるとはいえ、非核三原則を守っているので、条約の署名・批准の障害は高くありません。日本が核兵器禁止条約に参加し、すべての核兵器保有国に条約に参加するように働きかけることができるようになれば、核兵器廃絶への道は、大きく開けることになります。

日本被爆者団体協議会が、昨年12月にノーベル平和賞を受賞したことは、世界の大きな潮流が、核兵器禁止条約に大きな期待をしていることを明確に表していると思います。

核兵器廃絶をめざすために、日本政府が戦争被爆国としての位置を自覚し、条約の署名・批准を速やかに行うことを求めて、請願の採択を望みます。