上野原通信 No.294
フジ(マメ科Wisteria floribunda)が花を咲かせています。白い色のフジは、シロフジとも呼ばれますが、フジと同種です。本州・四国・九州の暖帯に生育する日本固有種です。花期は4月~6月、総状花序で、根元側から先端に向けて次々に花を咲かせます。
秋には、細長い豆果をつくり、2枚の果皮は厚く、木質化しさやを作ります。冬になって乾燥してくると、さやがねじれて中の豆を弾き飛ばします。寺田寅彦は随筆「藤の実」の中で、弾き出る豆の初速はおおよそ10m/秒と書いています。
枕草子84段に「めでたきもの」として、「色あひ深く花房長く咲きたる藤の花、松にかかりたる」と書かれています。古くから愛されるとともに、蔓は工芸品の材料としても利用されてきました。
今年は、いつまでも寒さが残りましたが、ここにきて一気に気温が上がり、山野は彩りを増しました。「山笑う」です。日本人にとって、四季は当たり前のことですが、大陸東縁の島弧列島で、大陸側にはヒマラヤ山脈という高山があるという特殊な条件が、明瞭な四季を存在させています。自然に対する深い洞察が、今こそ必要とされているのではないでしょうか。
2025.4.23 川田好博